こんにちは! 物書きの忍者です!
今回は、スイスの作家ヨハンナ・シュピリさんの作品『アルプスの少女 ハイジ』を紹介します。
みなさんはアルプスの少女ハイジをご存じですか?
- あまりよく知らない
- アニメを見たことがある
- 家庭教師のCMでよく見る
多くの方が「アニメで見たことがある!」と答えると思います。たしかに、1974年に日本でアニメが放送されてから、終了した後も何度も再放送される程に有名な作品となりました。
しかし、あまりにもアニメの知名度が高いからこそ、その原作となる小説を読んだことのある人は少ない筈です。
これは実に勿体ないことです。
アニメで放送されたものは、あくまで原作をわかりやすくまとめたものにすぎません。要するに、児童向けアニメとして適さない部分や、文化の違いから表現の難しいものなどは割愛されているわけです。
アニメで語られていない部分を取り入れたなら、この作品はむしろ大人にこそ読んでほしい内容に様変わりします。
これから紹介する作品の要点は主に三つです。
- ハイジは人格形成小説?
- お爺さんは昔、かなりの悪だった
- 影の主役はお医者さん
具体的に説明していきます。
ハイジは人格形成小説?
この作品はゲーテの影響を強く受けており、物語は苦難や教育を通して主人公であるハイジがどう成長し、人格を形成していくのかを中心としている。
そもそも『アルプスの少女ハイジ』とは、どんなお話なのでしょうか?
アニメのイメージからすると、ハイジがお爺さんと共にアルムの山という都会の喧騒から離れた大自然の中でのびのびと暮らす牧歌的な感じの物語だと思います。
確かに、この作品は普段私達が目にしない様な雄大な景色を文章で表現していて、アニメとは違う形で、スイスの大自然を文字として感じられるところも魅力の一つではあります。
しかし、この作品の主題は少し違います。それは主人公であるハイジの成長です。
アニメの印象が強い人は疑問に思うかもしれません。そこでこの作品の原作について少し説明しようと思います。
スイスの作家ヨハンナ・シュピリさんの作品『アルプスの少女 ハイジ』は二部構成で書かれた作品で、当初は
- ハイジの修業時代と遍歴時代
- ハイジは習ったことを役立てることができる
というタイトルがそれぞれついていました。
このタイトルは、ドイツを代表する作家であるゲーテの描いた作品
- ヴィルヘルム・マイスターの修業時代
- ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代
という二つのタイトルからも影響を受けていることが窺えます。それは作者であるヨハンナ・シュピリさんがゲーテの作品のファンだったからとされています。
ところで、ハイジのタイトルにも引用されたこのゲーテの作品はどんな内容なのでしょうか?
それはヴィルヘルム・マイスターという主人公の苦難と成長を描いた教養小説として知られています。
つまり、ハイジという作品は、ゲーテの教養小説のタイトルを引用するほどに影響を受けた、主人公であるハイジの苦難と成長を中心として描かれた物語だと言えるわけです。
お爺さんは昔、かなりの悪だった
大人にこそ読んでほしいのはお爺さんのお話で、ハイジと共に暮らすことになるお爺さんは、昔、遊びや酒で財産を使い果たし外国で傭兵をしていたなど暗い過去が前半で明かされる。
アニメにはない原作の見どころの一つは、ハイジがアルムの山で一緒に暮らすことになる『お爺さん』です。
物語の前半部分では、このお爺さんの暗い過去が語られていて、ハイジと接していくうちに変化していくお爺さんの人格も作品の重要な点になっています。
「そもそもアニメを見たことがないんだけど?」という方のために簡単なあらすじを説明しましょう。
まず、この作品の大まかな流れはアニメと同じで、幼くして両親を亡くし、5歳になったハイジは母方の叔母にあたる『デーテ』に連れられてアルムの山小屋に向かうところから始まります。
叔母であるデーテは自分が大都市のフランクフルトで働くため、子供の面倒をみれないので幼いハイジを預けようと、山小屋に住むお爺さんのところを目指していました。
この時、山小屋に連れてこられてきたハイジとお爺さんのアルムの山という自然の中での暮らしを描いているのが『アルプスの少女ハイジ』の序盤のあらすじになります。
アニメを見たことのある方はこのお爺さんに対して『頑固で偏屈な老人』というイメージを持っていると思います。原作でもお爺さんは人嫌いで偏屈な老人として最初は描かれています。
原作との大きな違いは、このお爺さんの過去で、若い頃に酒や遊びで財産を使い果たした後に行方を晦ましたという話が出てくる点です。
立派な農園の長男として生まれたお爺さんは、財産を使い果たした後、ナポリで傭兵になります。そして十数年の月日が経ち、トビアスという息子を連れて生まれ故郷に帰ってきます。
しかし、お爺さんはナポリで人を殺したという噂もあり故郷の村人に受け入れてもらえず、怒りから村人と関わらないようにして、息子のトビアスと二人で暮らしました。
お爺さんと違い、大人になって村人にも気に入られるようになったトビアスは、デーテの姉にあたるアーデルハイトという女性と結婚し、娘のハイジが生まれます。しかし、その二年後にトビアスは事故死し、妻のアーデルハイトも夫の後を追うように無くなってしまいます。
そんな出来事もあり、ますます人と接し無くなるお爺さん。いつしかアルムの山に登り引き籠る様になってしまい、村人からは神とも人とも仲たがいしてしまったと言われるようになってしまいます。
児童文学としては少々暗い印象を受けます。そういった面からも子供向けであったアニメではカットされたのかもしれませんが、このお爺さんがハイジと接していくうちにどう変わっていくのかも原作の見どころなので、ぜひ読んでみてほしいです。
影の主役はお医者さん
アニメとの大きな違いの一つは、クララの主治医でもあった『クラッセン』という医師が登場人物として重要な役割を担っているところである。
アニメをよく知る人に「名シーンは何か」と尋ねたなら、その多くが「クララの立つシーン」と答える筈です。
クララとは大都市フランクフルトのお屋敷に住んでいる足の不自由なお嬢様で、ある時にアルムの山から遊び相手として叔母のデーテ連れてこられたハイジと親友になる少女である。
療養のために向かったアルムの山で足の不自由だったクララが歩けるようになるシーンは、アニメを見ていた人にとっては強く印象に残るほど感動的でした。
ところで、アニメではあまり活躍しませんが、原作で大切な役割を担っている重要人物がいます。
それは、クララの主治医である『クラッセン』という人物です。
多くの方が「誰?」と疑問に思うかもしれません。原作の中で彼の活躍する最初の場面は、ホームシックになり夢遊病を患ってしまったハイジをアルムの山に帰すように勧めたのがクラッセンです。
ある意味、医師であるクラッセンがいなければハイジは大都市フランクフルトから山に帰ることが出来なかったわけですから、ここだけでも重要な役割を持った人物と言えます。
原作にある物語の後半では、奥さんや一人娘をなくしているなど彼の過去についても描かれており、山小屋に住むお爺さんと友人になったりもしています。
アニメではクララの主治医としか出てきませんが、原作では主要人物として活躍するところが見どころであり、大きな違いの一つだと言えます。
さいご
今回は、スイスの作家ヨハンナ・シュピリさんの作品『アルプスの少女 ハイジ』を紹介しました。
要点をまとめると、
- ハイジは人格形成小説?
- お爺さんは昔、かなりの悪だった
- 影の主役はお医者さん
アニメだけでなく、原作にも興味を持って頂けると嬉しいです。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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